炭水化物の「適正量」

フォロワーさんからの質問に答えます。

3:3:4とたんぱく質、脂質、炭水化物と日本の病院では言われていたり、アメリカでは、もう少し炭水化物少なめでいいといわれていると読んだことがあります。生涯踊れるカラダを考えた場合、健康維持、病気予防とは違った視点で、炭水化物量が考えられると思います。
一方、身軽、軽量、関節にかかる負担から考えた場合、炭水化物量をうまくコントロールしたいと思います。実際のところ、どれくらいのバランスが良いのでしょうか。

炭水化物って何でこんなにややこしいのでしょう?

絶対的な量をここで答えることは出来ません。

なんでかというと、それを導き出すためには身体測定以外にも食事・ダイエット歴、病歴、薬・サプリメントの摂取、トレーニングの詳細、ゴール、という様々な事を考慮していかないといけないから。しかもそれらを考慮したとしても、人間の必要なエネルギー量というのは毎日変化するから(そう、全く同じ生活をしていても毎日変化するんですよ)。

だから個人セッションが大事なわけです。

でも可能な範囲で精一杯答えてあげたい、ということで、この質問の芯を考えてみました。

質問の奥にあるのは、「炭水化物をとりすぎたら(体重が増えて)関節に悪影響が出るんじゃないか」という疑問。

だからそれをクリアにしていこう。

まずは「炭水化物」から知っていきましょう。


炭水化物の種類

炭水化物って大きくわけると「糖質」と「食物繊維」に分けられるのね。

そしてざくっと役割を説明すると、

糖質は脳・体のエネルギー源

食物繊維は便通を促したり、腸内環境を良くしてくれるもの


糖質制限がブームになってるくらいだから、ここ最近は「糖質=体によくない」っていう見方をされてしまいがち。

だから「健康的な食生活をおくりたい」って思ったときに「糖質をコントロールしたらいいんだ」っていう考えになるのは、わかるよ。

糖質にも色々な種類があって、例えばお米とお砂糖では主になってる糖質のタイプは違うし、そうなると消化吸収率も違ってくる。例えば長時間のエネルギーを補給するには消化吸収の緩やかなタイプが必要だし、すぐにリカバリーしないといけない時は逆に消化吸収の早いタイプが役に立つ。不必要なものはないんだよね、目的が違うっていうだけ

炭水化物をここで細かく分けてたらきりがないから、食生活に関しては「ご飯」(主食)と「ご飯じゃないもの」(甘いお菓子とか)に分けるとしましょう。

そして、今日は「ご飯」について掘り下げていこう。

主食となるものだから、ご飯・麺・パン・粉モン・イモ類って感じかな。

そしたらこのご飯だけど、ご飯を増やすと体重や関節にどんな影響がでるのか・・・

ご飯の量または体重が増えるとケガが増える? 

NO.

むしろ体重が減るとケガしやすくなります。

ダイエットや食事制限をするとケガ(関節のケガ含む)が増えます。そしてこの時にダイエッターが制限する食べ物で一番多いのはご飯類なんです。

エネルギー不足で疲労が溜まるからミスがおきやすいっていうのと、筋肉が十分に再生できないっていうのが大きな要因。

質問にあった単語なんだけどね、身軽さって動作が軽快なこと。

体重そのものよりも、自身の運動神経・能力とか、筋肉の使い方や動き方に左右されるもの。

そしたら・・・身軽さが欲しい場合は、トレーニングの見直しの方がダイエットよりも必要になってきませんか?

一生踊れる体を保つために必要な炭水化物量は、健康維持のために必要な炭水化物量と違うの?

私の答えは No.

ダンサーにとっての健康体っていうのは踊っていくことを保てるカラダのことだと私は思う。

だから健康体=踊れるカラダ。

踊れる身体をつくる食事・食生活・栄養は、メディアの「健康食」やダイエット本では手に入りません。

でも、ここで学べる通り本当はすごくシンプルなものなんです。

これを一日二日続ければ急に踊りが良くなるのかというと・・・それは残念ながらないかな。

レッスンと同じで、繰り返し回数を重ねていくことで自分の強さになるんです。

それがすっごく歯痒いことってあるよね。

わかるよ。

炭水化物がややこしくなるわけってまさにこれなの。

「体重を減らす」ことが「踊る」ことよりもメインになるから。だからややこしくなるの。

「踊る」ことを目的にした場合、考えは「量は足りてるかな?」なのに対して、

「体重を減らす」ことを目的にした場合「この量だと多すぎるかな?」になる。

これが心配の種をまいて、「もっと少なくしなきゃ」というストレスになる。

そこからどんどん足りなくなっていっちゃう、っていうのがよく見るパターン。

ちなみに、ストレスが溜まると消化器官の働きは鈍ります。

量が足りているかどうかがわからない、っていう場合は、

  • 食事後の空腹感・満腹感(ワークショップ受講済みの方はスケールを活用してくださいね)

  • 食事後のレッスンでのエネルギーレベル

  • レッスン後の夕食の場合は就寝時のお腹の具合、睡眠の質、翌朝のエネルギーレベル

などを一つのバロメーターにするのも手。

 実際私の生徒・クライエントはこれらのバロメーターを使う人がとっても多い。 

これって、量を調節していく以外にも、自分の身体とチェックインするっていうダンサーにとってすごく大切な癖も身につくの。 

「今日の調子はどうかな?」って自分で自分のことを確認してあげる時間。

これからどれか、実践できるものはある?

Fumi x

ペーパーも読みたいって人は下記をご参考にどうぞ:

Russell JA. Preventing dance injuries: current perspectives. J Sports Med. 2013;4:199-210.

Thomas JJ. Keel PK. Heatherton TF. Disordered eating and injuries among adolescent ballet dancers. Eat Weight Disord. 2011. Sep, 16(3):e216-22.

Ekegren CL. Quested R. Brodrick A. Injuries in pre-professional ballet dancers: Incidence, characteristics and consequences. J Sci Med Sport. 2014. May;17(3):271-5.

Steinberg N, Siev-Ner I, Peleg S, Dar G, Masharawi Y, Zee A and Hershkovitz I. Extrinsic and intrinsic risk factors associated with injuries in young dancers aged 8-16 years. J Sports Sci. 2012;30(5):485-95.

Fumi Somehara

Fumi is the Founder and Principal Dietitian of DDD Centre for Recovery. Her expertise is in Dance Nutrition and Eating Disorders Treatment. She is passionate about supporting individuals to nurture respectful and compassionate relationships with their food and body.

https://dddcfr.com.au/fumi-somehara-bio
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