スタジオで体重を計るべきか否か
タイトルの答えは否。
曖昧なグレーゾーン無しの、絶対的なNO。
先日のDancers Life Supportとのビデオでも話題に上がったスタジオでの体重測定についてですが、普段から生徒・教師両方から聞かれることが多いのではっきりさせておきましょう。
体重を計らない方が、生徒もお教室も良い方向に進める、Win-Winのシチュエーションになるから。
体重計の数値が映し出すものは何?
まずは、体重を計ることで何が得られるのでしょう?
体重が減ったか増えたかがわかりますよね。
体重計と、それに乗っているもの(この場合人間ね)の間に存在する引力によって、○○キロっていう数字が表示されるから。
そしたら、体重計に記される数字、もしくはその数字が変ることで、生徒の良し悪しがわかる?
・・・そんなわけないですよね。
子供でも大人でも、体重・体型についてコメントされればされるほど、無理なダイエットに走ります。
そのコメントに悪意があろうがなかろうが関係ありません。
スタジオで体重を計る目的
すごく正直な話、スタジオで体重を計るっていうことは、大きい(もしくは体重が増えてきている)生徒を咎める・たしなめる目的がありませんか?
(ダンサーが無理な減量をしないように、って体重を計っているスクール・バレエ団は残念ながら今まで一度も目にしたことがありません)
「大きい・太い・重いダンサーを見つけて減量させよう」
っていう目的のもと、実施されているのがほとんど。
これ、どう思いますか?
言葉にして書くと、どれだけエゴイスティックな考えかがわかります。
このような体重測定はお教室にとってもマイナスなものしか生みません。
なんでかというと、生徒が体重を気にしてダイエットに走った場合、とても高い確率でその生徒の月経は乱れるし、骨密度にも影響がいって骨折などのケガが増えます。
また、体重・体型をコントロールすることを目的としたダイエットというのは9割以上の割合でリバウンドを起こします。
これは、体の安全機能が働くから。
ダイエットを繰り返せば繰り返すほど、代謝の悪い体になっていきます。
これもまた、体の安全機能が働くため。
そして、ダイエットを繰り返せば繰り返すほど、食生活の質が落ちます。
これは、ダイエット中に発信された「制限しよう」という意識と行動が、過食または拒食を増長させるから。
どっちの傾向に向くかっていうのは性分や遺伝子によって変わってきます。
このような状況に生徒を追い込むことは、お教室にとってどうなのでしょう?
私が親だったらそんなスタジオに自分の子供を通わせたいとは思いません。
そしたら、体重を計るかわりに生徒のためになることって何があるんでしょう?
実際的な案としていくつか提案させてください。
1.生理について話す、またはインフォメーションシートを用意しておく
ダンサーにとって生理というのは体調のバロメーターです。
初潮前後は特に自分の体が大きく変わっていく意識が本人にもあって、ホルモンレベルの変化と合わさってとてもセンシティブな時期。
この時期に体重・体型が変ることを周りが受け止めてあげることで、本人の気持ちも生活習慣も安定します。
無理なダイエットの根底にあるものは、「自分の体は受け入れてもらえない」っていう思考。
だから、周りが受け止めるっていう姿勢は、それだけでダンサーの健康を守れる、とてもパワフルなものなんですよ。
男性ダンサーの場合、生理という目に見えるものはありませんが、エネルギー不足の影響は似ています。
2.生徒の体重・体型についてコメントしない
「太ったんじゃない?」みたいなコメントはもちろん、「痩せたね、すごい!」という風なコメントも実は無理なダイエットを促すことになります。
痩せたことを褒める=痩せる以前は褒めることがなかった、というメッセージを暗に出しているから。
せっかくスタジオにいるならもっと適格なフィードバックをあげて。
リハビリ用のエクササイズを毎日していて偉かったとか、前よりもルルベが高くなっているとか、ポールドブラの意識が良くなっているとか、アレグロの時はプリエを丁寧にしてとか、ターンアウトするのが難しそうだからちょっとフィジオに見てもらったら、とか、バレエ教師だからこそあげられるフィードバックは沢山あります。
体重・体型についてコメントしている時間は、バレエ教師にしか出来ないコメントをする時間を削っちゃっている。
もったいないでしょう。
3.ダンサーの体は一人一人違って当たり前、ということを常日頃から口にする
チワワとジャーマンシェパードの大きさは一緒?
違いますよね。
犬の種類によって大きさも、色も、体型も違って、それは当たり前だってわかっていて認められているのに、人間とくにダンサーになると多様性を認めにくくなるのはどうしてなのでしょう?
どうして「ダンサー体型」っていうのはひとつしかないように言われるのでしょう?
バレエの歴史をみていけばこれが奇妙なことに気づきます。
それでも「あの子はダンサーにしては太すぎる」
って思ったら・・・
それはね、
偏見です。
それはもう、自分の問題。
自分が「太っているダンサーは好きじゃない」と思うなら、それは自分で処理しないといけない感情であって、生徒・ダンサーに押し付けていいものではありません。
バレエ教師は、ダンサーを育てるとても尊い仕事だと思う。
そんな素晴らしい職なのだから、出来る限り生徒の未来を広げてあげたいと思いませんか?
スタジオで体重を計らないということで生徒の健康をサポート出来るんだから、これはすごくポジティブなことではないでしょうか。
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