HAES®とは?バレエと摂食障害との関係性
12月5日(日)に、TASTEのかおりさん&利香さんと、日本初のHAES®講座を開催しました。
私にとってはとっても大事なテーマなのです。
Health At Every Size®
HAES®は Health at Every Size の略で、体重差別をなくし、人々が平等に尊厳に満ちた扱いを受けられるようにしましょう、という理念です。
人種差別や性差別同様、体重で人の優越を計ったり、太っているのを理由にいじめたり不適切な対応をすることをやめましょう、ということ。
体重や体型の差別は、DDDでもよく取り上げるトピックですよね。
HAES®とバレエの関係性
どうしてHAES®がバレエに関係しているのか?
それは、バレエ界は体重で人を差別する業界だからです。
勿論、そうしていない個人の指導者やスクールは沢山います。
だけど、業界全体としてみた場合、トップで主導権を握っている人や団はまだまだ体重差別を平気で行っています。
毎週のように、プロのダンサーのクライエントからは、「痩せないと次の契約は更新しないと言われた」や、「痩せていないから役をもらえなかった」ということを聞く度に、私はすごく悲しくなります。そんな対応、誰も受けるべきではないからです。
HAES®と摂食障害の関係性
摂食障害のほとんどは、ボディイメージに対する不満が顕著に表れます。
厳密にいえば、「太ることに対する恐怖または嫌悪」が顕著に表れます。
例えば拒食症の死亡率は5人に1人。
太ることに対する恐怖や嫌悪が大きすぎるあまり、自分自身に食事・栄養を与えることが出来なくなり、やがて死にいたります。
どうして太ることに対してそこまでネガティブな感情を持つかというと、それは社会がそうさせているからです。
世間一般では、
太る=悪い
太っている=怠慢
痩せている方が綺麗で周りの待遇も良い
痩せる努力をしている人は偉い
という風潮がありますよね。
ファッション誌では常にダイエットの特集があって、CMのほとんどは糖質制限や脂質カットのメッセージが流れている。
「痩せないと価値のない人間なんだ」と思うのは、個人のせいではなくて、社会がそうさせているから。
しかもね、拒食症って「ものすごく痩せている人」っていうイメージが一般的だと思うけれど、これもまた医療とメディアの体重差別が作り出したイメージです。
拒食症は高体重の人でもなります。
一般的に「太っている」と言われる人でも拒食症になります。
必要な食事・栄養・エネルギー量を自分に与えることが出来ずに(それは本人のせいではなくそれを助長する社会システムのせい)、低栄養状態に陥り、太ることに対して恐ろしいほどの不安を覚えるのが拒食症です。それによって体重が劇的に減る人もいれば、そこまで減らない人もいます。
医療界では、「神経性無食欲症」(痩せている人の「拒食症」)と、「非定型神経性無食欲症」(痩せていない人の「拒食症」)という風に、診断名が違うんです。さも、痩せていなければその摂食障害が深刻ではないといっているようなもの。
おかしいでしょう?
HAES®はこれを根本的に変えるものだと私は思います。
理念なので、人種差別をしないとか、性差別をしないとか、そういうレベルの話です。
体重で人を差別しない。
HAES®5つの指針
HAES®には5つの指針があります。
1.インクルーシブなからだの見方を採用すること
体重や体型の多様性を認め、特定の体重を美化あるいはタブー視する見方を拒絶する。
2.すべての人の健康の向上を後押しすること
健康に関する情報やサービスを誰もが平等に受け取ることのできる社会システムの構築や、個人のウェルビーイングを身体・経済・社会・精神・情緒など多面的にとらえ高めることを目指す生き方を支持する。
3.ウェルビーイングを実現する食生活を推奨すること
体重をコントロールすることを目的とした食事の取り方ではなく、自分のからだの声に耳を傾け、食べる喜びを感じながら食事をすることを大切にする。
4.尊厳のあるケアを実現すること
私たち一人ひとりが自分たちの中にある偏見を認識し、体重による差別を社会からなくすべく努力をする。体重による差別が、社会的地位や人種、ジェンダー、性志向、年齢などの影響を受けることを理解した上で、情報発信やケアを行うことを常に心がける。
5.身体を動かすことの楽しさや心地よさを感じられる運動を推進すること
一人ひとりが、自分の体型や能力や関心に合ったやり方でからだを動かし、そのことを通じて自分の人生をより豊かに生きる権利をもっていることを覚えておく。
どれも、人として受けるべき当たり前のことだと思いませんか?
今現在そうなっていないこと自体、おかしいと思いませんか?
どうしたら体重差別をしない人になれる?
これは、DDDでは前からとり上げているトピックです。
会話を変えていきましょう。人の体重にコメントしないことを練習するのがお勧めです。
体重は計らないのが一番。勿論スタジオでも。体重を計る必要があるのは、摂食障害治療の中で体重回復が必要な時だけです。あ、あと麻酔の量とか計らないといけないとき。普段、日常生活では必要ありません。
要は、体重にエアタイムを与えないということなんです。
会話に挙がらなければその分考えることも減ります。
体重を計らなければその分考えることも減ります。
体重について考える時間が減れば減るほど、自分の趣味や人間関係、課題やその他大事なことに費やす時間が増えます。
そして最後に、ダイエットや体重に関するエビデンスを学びましょう。特に人を指導・ケアする職についている(指導者や医療関係者、コーチや教師など)場合、正しい知識を身につけるのはオプションではなく責任だからです。