相対的エネルギー不足(RED-S)
ダンサーの2~3人に1人が陥るのが、相対的エネルギー不足(RED-S)状態です。
これは名前の通り、エネルギーの摂取が消費にマッチしなくなって(下回って)しまうことで、身体の様々な機能に影響を及ぼします。
英語では RED-S (Relative Energy Deficiency in Sports)と言います。
(読み方はレッド・エス、またはレッズ)
ダンサーの60%以上が中度~重度のエネルギー不足で、しかも35%が6歳児並みのエネルギーしか摂取できていない。
これは大問題。
エネルギー不足(食べ足りない)は、長引けば長引くほど身体的なダメージが取り返しつかなくなってしまいます。
骨がもろくなる
月経不順や無月経で不妊になりやすい
精神的に不安定になる
ケガで踊れなくなる、もしくは普段の生活すら危なくなる
RED-Sは性別関係なく、同様の身体的・精神的ダメージにつながります。
メカニズムとしてとしては:
エネルギー・栄養が不足する ➡ テストステロンまたはエストロゲン(性ホルモン)が低下する ➡ 骨密度、筋力、筋肉量、体力が低下する
(上記のメカニズムはブログ用にとっても簡易化したもので、実際はもっと複雑です)
身体も携帯もチャージが必要
携帯のバッテリーが切れたらどうしますか?
チャージしますよね。
だってバッテリーが切れてしまったら携帯使えないし、不便でしょう?
バッテリー切れになってはいなくても、残量20%くらいになるとバッテリーセーブモードになって、アプリが遅くなったり、画面が暗くなったりして携帯の機能をフル活用出来ないでしょう?
だからほとんどの人はバッテリーが切れる前に充電しますよね。
それなのにどうして食事のこととなると、平気でバッテリー切れになってしまえるのでしょう?
お腹が空いているのに我慢したり、食事休憩をとらずにレッスンを続けたり。
RED-Sの予防・改善には、ダンサーの食行動のみならず、レッスン・スケジュールの調整が大きく影響します。
スタジオ・スクールがRED-S予防のために出来ること
レッスンの間にエネルギー補給目的の休憩を入れる。
5分じゃエネルギー補給できません(飲めても食べれない)。少なくとも15分は欲しい。
お昼休憩は少なくても45-60分。
リハーサルだったり、サマースクールだったり、レッスンを詰めてなんぼ!みたいな雰囲気がありますが、お昼をしっかりと食べて消化するには最低でも45分は必要です。望ましいのは60分。
お昼時間が短くなればなるほど、ダンサーは「お腹いたくなったらどうしよう」「食べてすぐ動いて気持ち悪くなったらどうしよう」、と心配の種が増えるため、食事量を少なくしてしまいます。これはダンサーの責任ではなく、スクールの責任。食べる環境環境づくりを心がけましょう。
エネルギー不足について日頃からダンサーを教育する
ダイエットが普通みたいになっている社会で、エネルギー不足について情報を得られるダンサーは少ない。ましてそれがまだ子供なら尚更のこと。
だからこそ、指導者が率先してエネルギー不足について正しい情報をダンサーに伝えるべきだと私は思います。
知識は力なりって言うでしょう。
Fumi x
ダンサーの食事について正しい知識を身につけたい方は【バレエ教師が知っておきたいダンサーの食事と栄養【入門編】】をご受講ください。
指導者として更なるレベルアップをする準備の出来ている方は、【バレエ教師なら知らなきゃいけない摂食障害【基礎・予防・スクリーニング】】をご受講ください。
思春期ダンサーのボディイメージについて学びたい方は、【ダンサーが知っておきたい成長期のカラダと変化】がお勧めです。
参照:
Keay, N., Overseas, A., & Francis, G. (2020). Indicators and correlates of low energy availability in male and female dancers. BMJ open sport & exercise medicine, 6(1), e000906. https://doi.org/10.1136/bmjsem-2020-000906